長期記憶とは?種類やメカニズム、短期記憶との違いをわかりやすく解説

長期記憶とは?サムネイル

私たちは、毎日の生活のなかで多くの新しい情報と出会います。

しかし、本当に自分の一部となって長く残り続けるものは、実はごくわずかです。

この「自分の一部になる」力こそが、長期記憶

長期記憶は、単なる暗記や一時的な知識ではなく、アイデンティティやスキルの土台となる大切な存在です。

 

脳はどのようにして情報を蓄積し、必要な時に引き出すことができるのでしょうか?

これは人間の“謎”であると同時に、私たちが成長し続けるための強力な味方でもあります。

この記事では、長期記憶とは何か、なぜ重要なのかをひも解きながら、学びを深めるコツや意義も紹介していきます。

長期記憶と短期記憶・ワーキングメモリの違い

長期記憶 インフォグラフィック

私たちの「記憶」は、すべて同じように見えて、その実、脳内で異なる役割と性質を持っています。

短期記憶ワーキングメモリ、そして長期記憶は、それぞれが学びや日常生活のあらゆる場面で重要な働きをしています。

このセクションでは、「なぜ何かをすぐ忘れてしまうのか」「どうすればしっかり覚えられるのか」——そんな疑問の出発点となる、記憶の三つの機能をわかりやすく整理します。

記憶の種類特徴保持期間
短期記憶
(Short-term memory)
一時的に情報を蓄える「預かり所」。電話番号や会話の内容など、必要とされる情報だけを一時保管。
「マジカルナンバー7±2」と呼ばれる容量の限界があり、数秒〜数分で消失。
数秒〜数分
ワーキングメモリ
(Working memory)
短期記憶を「作業台」として活用し、情報を取り出して加工・思考・判断する。
問題解決・会話・計算などで活躍。単なる保管ではなく、能動的な情報処理スペース。
数秒〜数分(作業中のみ)
長期記憶
(Long-term memory)
意味や経験、スキルなどを「半永久的」に保存。
情報の絞り込みや繰り返し、重要性に応じて保持される。
容量に実質上限がなく、人生を通して蓄積。
数日〜一生

 

短期記憶は、文字通り「短期間」しか情報を保存できません。

例えば、人から電話番号を聞いた直後は覚えていられますが、少し経つと忘れてしまうことが多いのはこのためです。

上限は7±2個(マジカルナンバー)と言われており、次々と新しい情報が入ってくる中で、古い情報はすぐに消えてしまいます。

 

ワーキングメモリは、短期記憶を「頭の作業台」として活用するためのものです。

例えば、計算をしたり、複数人と会話をしながら考えをまとめたりするときに使われています。

情報を覚えるだけでなく、「今」「ここ」でその情報を操作・応用する力が特徴です。

この力は、学業や仕事だけでなく、日常生活のあらゆる場面で活かされています。

 

一方で、長期記憶は、重要だと判断された情報や繰り返し使われる知識・経験が脳の奥深くに保存されます。

一度長期記憶に入ると、数年後や人生の後半になっても思い出すことができるのが特徴です。

語学、スキル、人生の思い出など、私たちのアイデンティティやスキルの基盤はすべて長期記憶から生まれます。

 

短期記憶・ワーキングメモリ・長期記憶は協力し合い、私たちの日常や学びを支えています。

それぞれの特徴を理解しておくことは、「どうすれば忘れずに覚えられるか」へのヒントになります。

 

長期記憶の分類:陳述記憶と非陳述記憶

長期記憶と一口に言っても、すべての記憶が同じ性質を持つわけではありません。

脳科学や心理学の研究によって、長期記憶は大きく「陳述記憶」と「非陳述記憶」という2つのタイプに分けられることが明らかになってきました。

この分類を理解することが、知識やスキルを効率よく身につけたい方にとって非常に重要なポイントとなります。

自分の「覚える」「忘れる」に関する悩みが、実は記憶の種類によって異なる対策やアプローチが必要だと知れば、学習の質が大きく変わります。

ここではそれぞれの特徴と具体例を通して、記憶の不思議に迫ります。

 

陳述記憶(宣言的記憶):言葉にできる記憶

陳述記憶は、頭の中で「これは◯◯だ」と明確に言葉にできる記憶です。

自分の意識で思い出すことができるため、勉強や暗記、日常の会話で大きな役割を果たしています。

この記憶はさらに「意味記憶」と「エピソード記憶」に分かれます。

意味記憶一般常識や言葉の意味。個人の経験ではなく、世の中の知識のベースとなる。語学の学習や専門知識のストックもここに蓄えられる。
エピソード記憶自分が体験したエピソードや出来事。日付や場所、感情などがセットで記憶されることが多く、時系列をたどって思い出す特徴がある。

 

例えば「パリはフランスの首都です」は意味記憶、「初めてエッフェル塔に登った日のこと」はエピソード記憶です。

意識的に情報を引き出すことができるため、学校教育や試験対策、語学学習でも核となる記憶タイプです。

 

非陳述記憶(非宣言的記憶):言葉にできない記憶

一方で、無意識のうちに再生されるのが非陳述記憶です。

体が覚えていて意識しなくても自然にできることや、直感的に反応してしまう知覚的なパターンなど、言語化が難しいタイプの記憶がこれにあたります。

手続き記憶自転車の乗り方、泳ぎ方、楽器の演奏など体で覚える動作。意識しなくても体が動く状態で、語学の発音やタイピングもこの記憶に移行することで「自然にできる」ようになる。
プライミング記憶先に受けた刺激が、その後の無意識的な判断や行動に影響を及ぼす現象。言葉やイメージを見ただけで、関連する考えや反応が促進される。

 

「キーボードを見ずにタイピングができる」「自転車に再び乗ったとき、すぐ漕ぎ出せる」などは手続き記憶(Procedural memory)のおかげです。

また、「red」という単語を見てから「apple」を聞くとすぐに「赤いリンゴ」が思い浮かぶ、という現象もプライミングの影響です。

これらの記憶は、ほとんど意識にのぼることなく自動的に働くのが特徴です。

 

 

脳が情報を「長期記憶」として保存するメカニズム

私たちが一度覚えたことを長い間覚えていられるのは、脳の中で高度なプロセスが働いているからです。

「なぜすぐに忘れてしまうのか?」「どうすれば忘れにくくできるのか?」といった疑問には、脳の仕組みを知ることが大きなヒントになります。

単なる知識や暗記力ではなく、脳の科学的な働きを理解すると、効率的な記憶術につながります。

 

長期記憶の形成には、いくつかの重要な段階があります。

まず、私たちが受け取る情報は最初「短期記憶」として脳に入り、まるでメモ帳のような場所に一時保存されます。

この短期記憶が「本当に重要だ」と脳に認識されることで、「長期記憶」として保存されていきます。

この“振り分け”や“保存”に、大きな役割を果たすのが海馬(hippocampus)です。

 

海馬は、情報の重要性を判断し、「必要なものだけ」「何度も繰り返されるもの」を大脳皮質という脳のメインストレージに送って、記憶を固定化(consolidation)します。

感情の伴う出来事や、強い印象を受けた体験は、記憶が定着しやすいのも、海馬と大脳のやりとりによるものです。

この固定化のプロセスは、情報がバラバラの状態から、まとまった「知識」や「スキル」に変化するために不可欠です。

 

また、忘却も脳にとっては大切な働きです。

不要な情報、ノイズとなる体験、何度も使われない知識は、「生き残るべき記憶」として認識されず、自然に消えていきます。

この選別によって、私たちは効率よく必要な情報だけを脳に残せます。

 

さらに、睡眠は記憶の定着に大きく関与します。

特に、レム睡眠・ノンレム睡眠中に、脳内では一日の出来事が整理され、重要な情報が「長期保存」用に再編集されます。

徹夜で勉強した知識がすぐ抜けてしまう一因も、睡眠を軽視したことによる「記憶の未固定化」が影響しています。

 

記憶を確かなものにしたいなら、「インプット→繰り返し思い出す→しっかり眠る」というサイクルを意識することが効果的です。

このような脳のメカニズムを知っておけば、学びやスキル習得の質が一気に向上します。

 

情報を効率よく長期記憶に移すための科学的方法

「覚えたはずなのにすぐに忘れてしまう」。

そんな悩みは、多くの学習者が一度は経験するものです。

ここでは脳科学のエビデンスに基づいた、「記憶をできるだけ長く、確実に脳に残す」ための具体的な学習テクニックを紹介します。

うまく使いこなせば、英単語だけでなく、仕事や他の勉強分野にも大いに役立つ知識です。

一つひとつの方法に根拠があり、地道な努力が「結果につながる」ことが実感できるはずです。

 

精緻化リハーサル(Elaborative rehearsal)

英単語を「意味」だけ覚えるのではなく、「なぜそういう意味になるのか」「自分の体験とどう結びつくか」を考えることで、記憶は格段に強くなります。

例えば単語 apple を覚える際、「リンゴ=赤いフルーツ」だけでなく、「小学校の給食で食べた思い出」や「iPhoneのロゴ」など、具体的なイメージやエピソードと結びつけるのがコツです。

 

学習ポイント:

  • 辞書的な意味や例文だけでなく、自分なりの説明やエピソードをメモする
  • 「なぜ?」を問いかけて深堀りする習慣をつける

思考を伴う「深い学び」が、記憶の定着力を劇的にアップさせます。

 

分散効果(Spacing effect)と検索練習(Retrieval practice)

一夜漬けでたくさん詰め込んでも、ほとんどは忘れてしまいます。

記憶は、繰り返し「間隔をあけて」復習することで、長く脳に残ることが科学的に証明されています。

また、「ノートや本を眺めて復習」するより、「自分の頭から思い出す」=検索練習の方が記憶が強化されます。

 

学習ポイント:

  • 同じ内容を1日後、3日後、1週間後…と間隔をあけてテスト形式で復習する
  • 毎回少しずつ難易度や質問形式を変えてみる

「思い出そうとする努力」自体が、最強の復習です。

 

マルチモーダル学習(Multimodal learning)

人間の脳は、複数の感覚を使って学ぶことで、より効率よく記憶を作ることができます。

英単語なら、「目で読む」「声に出す」「書く」「音声を聞く」「動作で表現する」など、色々なスタイルで五感を刺激するのがポイントです。

 

学習ポイント:

  • 発音を真似しながら覚える
  • カードでゲーム感覚にする
  • イラストや自作の図を活用する

感覚の「フック」をたくさん持つことで、思い出しやすくなります。

 

短期記憶を長期記憶に変えるには、脳が「これは大事!」と判断するだけの「深い処理」と「繰り返し」が必要です。

正しいラーニング・サイクルを意識すれば、誰でも無理なく記憶力を伸ばすことができます。

文法や英単語も、ただ詰め込むのではなく、科学的に“残る”方法で効率よく身につけていきましょう。

 

まとめ:長期記憶の仕組みを理解して人生を豊かに

私たちの毎日は、記憶に支えられています。

日々の学びも、仕事の成長も、誰かとの対話も——すべては長期記憶という脳の貯蔵庫があってこそ広がっていくものです。

知識を「覚えた」だけにせず、自分の中に「根づかせて使いこなす」ことができれば、人生の可能性は驚くほど豊かになります。

 

意味記憶を「分かる」から、手続き記憶として「できる」へ。

語学や資格取得、仕事のスキルアップなど、どんな学習もこのプロセスを経て身についていきます。

だからこそ、大切なのは「覚え方」を知り、自分に合った方法で記憶力を最大限に引き出すことです。

今回ご紹介した科学的な学習法や記憶の理解は、その第一歩となります。

 

あなたもTANZAMとともに、自分らしい長期記憶のつくり方を探してみませんか?

知識とスキルのストックをきっかけに、これからのあなたの毎日がさらに充実することを願っています。