単語が人生を変える——TANZAMが描く“言葉のインフラ”としての未来
「英語はずっと苦手でした。何度も挑戦して、何度も挫折してきたんです。」
そう語るのは、英単語アプリTANZAMの代表、柴崎亮。彼は日本生まれ日本育ち。ごく普通の日本人として英語と向き合ってきました。
しかし、20代の頃に海外MBAを志し、本格的に英語学習を始めたことで、その“壁の高さ”を痛感します。中でも特につらかったのが、単語の暗記でした。
「日本の英語学習って、ひたすら単語帳で“英語→日本語”の暗記を繰り返すスタイルが主流なんですよね。でも、いくら覚えてもすぐ忘れるし、そもそもその単語がどう使われるのかもイメージできない。まさに苦行でした。」
そうした経験から、柴崎さんの中にひとつの疑問が芽生えます。
「この100年近く進化していない学び方で、本当にいいのだろうか?」
覚えても忘れる、意味は知っていても口から出てこない、何よりつまらなくて続かない。
そうした多くの学習者が抱える課題を根本から変えたい——。その想いが、TANZAMというプロダクトの出発点になりました。
目指すのは、「暗記」ではなく、「言葉で出会う」学び。
そしてその先にある、「人生そのものを変えるような出会いを、英単語から生み出すこと」です。

きっかけは中国語のアプリだった
転機は、ふとした日常の中にありました。
「これ、ちょっと使ってみて」と、妻が差し出したのは、中国製の英語学習アプリでした。
柴崎さんの妻は中国出身で、ご本人よりもはるかに英語が堪能。その彼女が使っていたのが、イラストと例文を組み合わせて単語を覚えるアプリでした。
「正直、衝撃を受けました。日本の単語帳にはない“記憶に残る感覚”があったんです。画像から情景が浮かび上がり、言葉に温度がある。こんな学び方があったのか、と」
ただ、そのアプリは中国語話者向けに作られていたため、日本人の柴崎さんには使いこなすのが難しいものでした。
それでも心の中には、強く確信が残りました。
「こういうものが日本にもあれば、どれだけの人が救われるだろう」
そう思いながらも、当時の彼にはアプリを作る技術もチームもありませんでした。
それでも諦めず、構想を温め続け、留学中にも周囲に声をかけ続け、数年かけてようやく信頼できる仲間が集まりました。
非エンジニアの創業者として、ゼロからアプリ開発に挑む——TANZAMの誕生は、まさに「ユーザー自身の課題意識」から始まった挑戦そのものでした。
TANZAMが挑む課題:「言葉」はツールではなく、出会いだ
「覚えたはずなのに、出てこない。」
英単語学習において、多くの人がぶつかる壁です。日本の英語教育では、単語の意味をひたすら日本語で暗記することが長年の常識とされてきました。
しかし、それだけでは記憶に定着しづらく、実際の会話や文章の中で“使える言葉”にはなりません。
TANZAMが目指すのは、その常識のアップデートです。
このアプリでは、すべての単語に対してイラスト・文脈・例文を組み合わせて提示します。
それはただ視覚に訴えるためではなく、学びの中に「実感」や「背景」を宿すためです。
私自身も、長い英語学習の中で感じてきました。 言葉は単なる知識ではなく、 「努力した時間」や「試行錯誤の記憶」、そして「自分とは違う考え方・文化」との出会いとともに記憶されていくものです。
例えば、「diversity(多様性)」という言葉の意味は、辞書で読めば一瞬ですが、 海外で実際に異なる文化や価値観に触れた体験の中で、ようやく“腑に落ちる”瞬間がありました。
TANZAMは、そうした出会いの入り口を届けたい。
単語そのものが人生を変えるわけではなく、 その言葉を通して努力を重ねたり、新しい世界に触れたり、考え方が揺さぶられたり——
その積み重ねのなかに、「言葉が人生を動かす瞬間」が生まれると信じています。
教育の民主化へのこだわり
TANZAMには、ひとつの強い信念があります。
「どんな環境に生まれた子どもでも、言葉で未来を変えるチャンスを持ってほしい」ということです。
その想いから、TANZAMではすべてのコンテンツを完全無料で提供しています。
1日10単語ずつ学べる設計になっており、1年で3,000語、3年続ければ9,000語以上。英検1級や海外留学レベルに十分対応できる語彙力を、誰でも無料で身につけられる仕組みです。
もちろん、これはビジネスとして見ればチャレンジングな選択です。
ですが、柴崎さんは語ります。
「収益よりもまず、“出会いの格差”をなくしたいんです。
家庭の経済状況や生まれ育った場所によって、英語力や学習機会に差が出てしまう。
TANZAMは、それを少しでも変える一歩になれたらと思っています。」
単語学習という、ある意味では“地味”な領域にこそ、大きな社会的意義を込めたい。
TANZAMは、学びをすべての人に開く“教育のインフラ”を目指しています。
英語ができると、世界が広がる
英語を学ぶ目的は、テストで高得点を取ることでも、履歴書に書ける資格を増やすことでもありません。
本当の意味でのゴールは、自分の世界を広げることです。
柴崎さん自身、それを身をもって体験したひとりです。
20代の頃、留学を決意し、アメリカで3年間を過ごしました。その経験が、人生の価値観を大きく変えたといいます。
「日本にいたときは、なんとなく“人に迷惑をかけてはいけない”“レールから外れてはいけない”という思い込みが強かったんです。でも海外では、みんなが自分の好きなことを堂々と語り合っていて、応援し合っていた。初めて、“自分の人生を自由に選んでいいんだ”と思えました。」
英語が話せることで、アクセスできる情報が増える。
自分と異なる考え方や文化に出会える。
そして、「こんな生き方もあっていいんだ」と思える選択肢が増える。
TANZAMを通じて、柴崎さんが届けたいのは、まさにそうした“価値観の自由”です。
英単語をただ覚えるのではなく、その先にある出会いや成長に一歩近づけること——それがTANZAMの目指す学びの本質です。
正解がないから、おもしろい:TANZAMが求める仲間とは
TANZAMは、まだ発展途上のプロダクトです。完成された仕組みも、マニュアルもありません。
だからこそ、いま私たちが求めているのは、「つくり手」として一緒に走ってくれる仲間です。
キーワードは「やり切る力」と「考え抜く力」。
壁にぶつかっても、簡単にあきらめずに前に進める人。
「なぜこれをやるのか?」という目的意識を持ち、仮説を立てて動ける人。
そして、たとえばアプリのボタンひとつに対しても、「なぜここに配置するのか?」「この文言はユーザーにどう届くか?」といった問いを自然に持てる人が、TANZAMでは活躍しています。
決められた正解は、どこにもありません。
プロダクトの仕様も、チームの文化も、まさにこれからつくっていくフェーズです。
「自分の判断で動くのが楽しい」「正解がないからこそ燃える」
そんなマインドを持った方と、ぜひ一緒に新しい学びのかたちをつくっていきたいと考えています。
これから:世界中の学習者に「単語インフラ」を
TANZAMが目指しているのは、日本だけのプロダクトではありません。
「単語学習といえばTANZAM」——そんな存在になることを、本気で目指しています。
その第一歩として、今年中には韓国市場への展開を予定しています。
現在のTANZAMの強みである、イラスト×文脈例文による視覚的な学習体験は、言語が変わってもそのまま活かせる設計になっています。
UIや解説部分の翻訳を整えれば、韓国だけでなく、ベトナムやタイなどアジア各国の英語学習者にも十分に価値を届けられると考えています。
また、コンテンツ制作においてもすでにAIを活用しており、今後はライティングやスピーキングの学習支援機能にもAIを組み込んでいく予定です。
単語を覚えて終わりではなく、その単語を「使える」状態へと導く設計へと進化させていきます。
「世界中の誰でも、場所や環境に関係なく、自分の未来を切り開けるように」
それがTANZAMが目指す“単語インフラ”としての在り方です。
学びの壁を、言葉の力で超えていく。
その挑戦を、次は世界へと広げていきます。
